第4話
「幸せの黄色いTシャツ」
赤いチームカラーの代表格と言えば、マンチェスター・ユナイテッド、リバプールFC、
そして我らがバーンズリーFC。
97年、プレミアへの昇格を決める大事な一戦。場所はホームのオークウェル。
「いざ鎌倉」ならぬ、「いざヨークシャー」の使命の元、緊急帰国したニックとアラン。
取るものも取らず、ブリテッシュ・エアウェイズに飛び乗った。
マンチェスター空港から、友人の車でヨークシャー入り。
ほっと一息ついて、馴染みのパブで一杯やろうと立ち寄った時、財布の中身を見て愕然とした。
イギリスの北の町には、なんとも似合わない「福沢諭吉」が2人を見ている。
「しまったー。」それ程2人のテンションは、いっぱいいっぱいだったのだ。
早速ヨークシャー銀行へ駆け込んで、両替を試みた彼ら。一万円札を数枚窓口へ差し出す。
するとその銀行員の女性は、目を大きく見開いたまま固まってしまった。
「冗談でしょ?」と笑いながら女性は言う。
「冗談なんかじゃない!このままじゃビールが飲めないんだ。」とアラン。
「これは日本のちゃんとしたお金なんだ!これ1枚で50ポンドぐらいの価値はあるんだぞ!」
と食って掛かるニック。
「こんなの今まで見たことないわー」と吐き捨て、女性は面倒くさそうに奥の部屋へ入って行く。
支店長らしき男性を連れてくると、やっとのことで、イギリス・ポンドを手に入れることができた。
納得のいかないことは数々あれど。しょうがない、だってそれがバーンズリーなのだから・・・・。
荒くれ者の巣窟、ホームスタジアムのオークウェルは赤一色。
それは、バーンズリーの血であり汗であり、そして心臓なのである。
地鳴りのような雄叫び、まさに野生の本能。
野獣に囲まれたウサギのように、アウェイのブラッドフォードの選手達は、ぎこちない90分間を過ごした。
町全体の迫力に後押しされ、終了のホイッスルが鳴り響く。
バーンズリーFCの勝利、プレミアの昇格が決まった。
その夜、町中のビール樽が空になったのは、言うまでもない。
翌日、二日酔いのニックは「WE ARE UP!」と歌いながら、アランの実家を訪ねた。
玄関のドアを開けてニックが目にしたものは、
なんと、お揃いの黄色いTシャツを着たアラン一家の姿。
「よう、ニック。昇格記念のTシャツなんだけど、オマエの分も買っといたから。」
そう言って、手渡された黄色いTシャツの背中には
「IT’S JUST LIKE WATCHING BRAZIL!」
と緑の文字で書いてある。サッカーの母国のプライドをかなぐり捨てて、
よりによって「まるでブラジルを見ているようだ!」なんてプリントしちゃうセンス。
(このフレーズは応援歌の一節ではあるのだが)
それにしても、なんで赤いTシャツじゃないの?
恐るべしバーンズリー。
その後、97−98の1シーズンだけで、再び1stDivへ降格してしまうのでありました。
がんばってバーンズリー!そしてまた、あの黄色いTシャツを着るその日まで。行け!ニック&アラン!
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