第33話

「郷土愛Love to a hometown」

バーンズリーという得体の知れない場所から、この日本へやって来たニックとアラン。
同郷出身というだけで、独自の連帯感を増す。
近寄り難いオーラを放ち、周りにインパクトを放ちまくるわけだが・・・。
例えそれが、知名度の低いサウス・ヨークシャーの小さな町であっても、
彼らは堂々とバーンズリー出身という身分を証す。
それどころか、知らないなんて言わせない!とばかりに、ビールを煽りながら猛烈に生きている。

そんなニックとアランに、ある日聞いてみた。
「いったい誰が有名ですか?」と。
当然のような顔をして、返ってきた答えは。
その名も、ずばりミックマッカーシー、あの元アイルランド代表監督である。
残念ながら、代表監督は引退。その後サンダーランドと共に、降格してしまった彼ではあるが。
ジャック・チャールトン級のインパクトを残し、2002ワールド・カップでも印象深い男である。
あの猛者顔は確かにバーンズリーの匂い。
少しばかり曲がった鼻筋、フサフサとした濃いマユ毛。
おまけに「俺だってプレイしちゃうぞ」張りにアピールした、短パンにストッキング姿。
「ボーイズ・イン・グリーン」を率いて、世界中に散らばったアイリッシュを一つにした(ロイ・キーンを除く)。
セント・パトリックスデーのパレードのように、決して弱音を吐かない、明るくて良いチームであった。

彼ミック・マッカーシーは、バーンズリー生まれのアイリッシュ。
プロとしてのキャリアをスタートさせたのも、もちろんバーンズリーFCが最初だ。
イングランド人でなくても、ニックとアランは彼を誇りに思っている。
アイルランドついでに、少し横道には外れるが、サポーターもまた素晴しかった。
スペイン戦のTV中継、どアップで写し出されたアイリッシュの親父を覚えているだろうか?
終了間際のロービ・キーンの同点PK。
そいつが決まったとたん、セルティック柄のスカーフを誇り高く掲げていた。
とても素人とは思えない程「いい顔」をしていたあのシーンだ。
心の底から笑ったり、泣いたり、どこまでも人間臭いアイルランドの人々。
彼らもまた、熱烈な郷土愛に満ち溢れている。

と一通り、良い話ばかりで本日最後のパイントを空ける。
するとゲップと共に、アランが何かを思い出したようだ。
「あの〜、もう1人いたよ〜」
突然の展開に、俺は興味津々。
「この話は、バーンズリーの人もあまり知らないんだけど〜」
(だから、もったいぶらないで。誰?早く教えて)
「デヴィッド・シーマン!」
あのイングランド代表GK、どうやらバーンズリー生まれらしい。
公表してないわけではないらしいが・・・、微妙だ。
あのヒゲ、そしてポニーテール・・・。
あんまり嬉しくないな。