おまけ


6/12水曜日、ナイジェリア対イングランド戦が行われたその日。
ニックとアランは、大阪から東京へと向かう新幹線の中で静かに発車を待っていた。
もちろん観戦の帰りである。デーゲーム0ー0のドロー、ゴールシーンの無かった欲求不満と、
暑さでグッタリとした2人。すると列車に居合わせた他のイングランド人が歓声を上げた。

「アルゼンチンが負けたぞ!」

(な、な、なんと、あのアルゼンチンが負けた・・・・。
決勝トーナメントで、またコテンパンにやっつけてやろう思っていたのに。口ほどにもない奴らメ)

「2位通過ということは・・・つまりは新潟か」
(したり顔でニヤリとするニック。ウンウンと嬉しそうに頷くアラン)

東京に住んでる彼らにとって、1位通過の大分は遠すぎた。
つまりは2位通過の新潟、これこそニックとアランが狙っていた最大のカードだったのだ。
思わぬ展開に笑いが止まらない2人、気が付けばいつのまにか新幹線は走り出している。

「え〜乗車券を拝見いたしま〜す」
(車掌が切符のチェックに現れた)

うかれたニックの悪戯心に火がつく。すかさず車掌の背後に回り、
かぶっていた彼の帽子を奪い去った。

「ストップ!ストップ!プリ〜〜〜〜ズ」
(泣きそうな声でニックを追い掛ける車掌)

それを見かねたサラリーマンの日本人男性が、ニックのかぶっていた帽子をサッと取り上げた。
その一部始終を楽しんでいた他のイングランド人達からは一斉にブーイングが起きる。

「止めなさい!」
(威厳を持ってニックを叱る男性)

しかし、その顔どこかで見たことのある顔。ニックは思い出した。

「お前、サラリーマン山田 だ!」
(突然そう言い放つニック。何を言いたいのかサッパリ分からないニックに対しアランは無視)

ニックのフィギュア・コレクションの中に、水木しげるの妖怪シリーズなるものがある。
ゲゲゲの鬼太郎らキャラクターの中の一つに『サラリーマン山田』というものがあるらしいのだ。

「山田じゃありません!!」
(きっぱりとそう言う男性・・・・しかし)

それから東京までの数時間、眼鏡姿のその男性にニックは『山田!山田!』と連呼して
ニヤニヤしていたらしい。単なるイジメッ子状態と化したニック。
その日本人男性はきっとイングランドが大嫌いになった事だろう。そう、たった1人の男のせいで。