第22話

「蛮頭里蹴球倶楽部」


幾つになっても子は子、親は親。アランとパパだって例外ではない。
遠く離れた親子の絆はイギリスと日本でより堅いものとなった。

「また荷物が届いたんだ・・・・」

と言って、アランがTA−BARへ持って来たものは紅茶のティ-バッグ。
しかも日本では、絶対に売っていない超徳用のビッグサイズ。
なんと160袋も入っているから、これまた恐ろしい。箱には『TY・PHOO』と印刷されてある。

「実家から送ってきたんだよ、パパからみんなにどうぞって・・・・・」

店中の日本人が目を丸くして、その赤と緑のパッケージを見つめていた。

「ありがとうアラン。ところでさあ、これって紅茶なんだね??????」

確認するようにBARMANのオダ君が、カウンター越しに尋ねた。

「もちろん紅茶だよ」ニヤリと笑うアラン。

親指を上に突き立てた2つの握りこぶし、
『最高だぜ〜』と言わんばかりの勝ち誇ったイラストが増々興味を掻き立てる。
デカイものの代名詞は、全てアメリカン・サイズだと思っていた。
しかし、紅茶に関しては違う。さすがはティー文化の本場、イギリスの徳用パックは並みではない。
とにもかくにも、早速その中身をみんなで味わってみた。

「ウ〜ン・・・・」

可もなく不可もなく。味は普通の紅茶であった。
そこへいつものように店に入って来た、ガラの悪そう〜なイギリス人。
ニックのお出まし。

「わーっ、懐かし〜い。俺にも一杯くれ!」

普段なら真っ先にパイントグラスを飲み干す男が、まるで子供のように紅茶をむさぼる。
スコーンかサンドイッチを肴に、朝まで紅茶か?これじゃまるでパブのランチタイムだ。

「ウマイ!」

ニックが吠えた。やっぱりイギリス人なんだなーと、改めて周りの日本人達も彼を見つめる。
異国で暮らす子供への親心。お腹空かしてないだろうか?ちゃんと食べてるだろうか?
元気でやってるだろうか?30才過ぎても親からみれば、いつまでも子供なのである。
郵送料を考えれば、なんとも割りの合わない実家からの小包。
東京にだって、紅茶ぐらいたくさん売っているのに。
それでもパパは定期的に徳用パックを息子へ送り続けるのだ。
ニックのママなんてもっと凄い。実家から、靴下が大量に送られてきたことがある。
中に入っていた手紙には、

『日本には靴下はあるのかい?たくさん送ってあげるからね。
風邪をひかないように・・・・・』と書いてあったそうだ。

パパからの紅茶を堪能した全員、お礼に何か送ってあげようということになった。
前々からオダ君の考えていたアイディアは、漢字の入ったバーンズリーFCのオリジナルTシャツ。
製作・構想は全てBARMANオダ。漢字でタテに『蛮頭里蹴球倶楽部』。
(訳:バーンズリーFC)野蛮な頭を持った里の人々、強引ではあるがアテ字としては最高だ。
背中には東京応援団と入る。そして極めつけは、胸に入ったイラスト。
バーンズリーのマスコットであるトビータイクが、紋付袴姿で、チョンマゲに刀を差したワンポイント。
バックにはさりげなく富士山が・・・・。なんせ手作りの、この世でたった一枚しかない作品。
愛情を込めてイギリスへと送られた。

アランの話によると、パパはそのTシャツをいたく気に入って、
パブへとオークウェルへと必ず着用して出掛けているらしい。地元の人気者だ。
しかし、その漢字の意味までは、さすがに理解できないであろう・・・・・・・。

がんばれ!バーンズリー!そしてもしも漢字のTシャツを見たら、遠く日本からも応
援している僕らを思い出して下さいませ。


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