第21話

「そして新たなる」


季節はずれのジングルベルが、ミュンヘンの夜に鳴り響く。
奈落の底に落とされたドイツ人を見て、ニタニタと笑みを浮かべる2人のイギリス人。
ニックとアランは、遠く日本からその一部始終を見ていた。
あんなに嫌っていたエリクソンも、もはや『サー』付けで呼ぶありさま。
開幕以来、一向に調子のでないバーンズリーFC。
そのウサを晴らすかのような、痛快ウキウキ物語。
旨いビールを飲んで、母国の代表が敵地で完勝して。
これ以上の喜びはないはず。
「あ〜イングランド人でよかったあ〜」とニック。
それはまるで、温泉でくつろぐ日本人のタメ息にも似た心の叫び。

この勢いで、GO!バーンズリー!といきたいとこだが・・・・・・。
最下位のストックポートにドロー、勝ち点3がなかなか取れない。
悶々とした苦悩の日々は、まだまだ続く。
そこへ、ある日本人選手のイングランド・ディヴィジョン1移籍騒動が。
台風情報を見ようと偶然回したチャンネル。
しかし飛び込んできたのはポーツマスKWAGUTIというキーワード。
「なっなに?日本のゴーリーがポーツマスだと?」
ニックは、慌ててアランへと電話した。

「なあアラン、カワグチがポーツマスへ移籍する話知ってるか?」

「またか・・・?日本人がイングランドで活躍できるのか?」

「そんな話じゃなくて、なあアランよく考えてみろ! ポーツマスはDiv1だ、
 ということはだな・・・・・。つまりはFCと対決するってことだぞ!」

「だから?」

「だから〜。この移籍が正式に決まれば、日本でも中継されるって事だよ!」

「そっかー、FCとポーツマスの試合が、日本でも見られるって事だな!」

THAT’S RIGHT!

台風級のメガトン情報で、俄然盛り上がる2人のイギリス人であった。

既に旅立った2人の日本人はいる。しかし、それはプレミア。
アーセナルはプレミア歴も長く、ある意味仕方ないとしても。
ボルトンだけは頂けない。昨年までDiv1でバーンズリーと戦っていた、
あんなチームが現在首位だなんて。
しかも、そんなとこへ日本人が行ってしまうなんて・・・・・・。
「なんで、バーンズリーに移籍しないんだー!」ニックは酔ってクダを巻く。

その昔バーンズリーFCのアウェイゲーム。場所は敵地リーボックスタジアム。
ニックは、そこで警察官に羽交い締めにあい、
スタンド観戦できずにボルトンの牢屋に入った経歴を持つ。
イギリス国内でも、指折りのマナーの良い町ボルトン。
良い子の町ボルトンちゃんが、ニックにとってはトラウマとなって憎いのだ。

「カワグチは男だ!」
まだ移籍も確定しないうちから、声高らかに雄叫びを上げるニックとアラン。

01ー02シーズン、今イングランドDiv1が熱くなる。
2人のイギリス人だけではない、ここ東京からも熱いエールを送ろう!
ヨークシャー・ポストの一面を、バーンズリーの記事で再び飾るその日迄。

その意気込みでアランは遂にスカパーに加入した。
しかし、彼の家のTVにはプレミアリーグの中継は映らない・・・・・・・・・・・・・・。
ちゃんと申し込んで本登録しないと、ダメなんだよアランくん。
いつまでも、タダで見られると思っていたら大間違い。

がんばれっニック&アラン!
そして、アランがスカパーと本契約できますように。