第19話
「男は黙って・・・」
近年のイギリス映画のヒットで、あのケン・ローチが一喝!
「ハリウッドに魂を売っている!」と、BBCのインタヴューで、英国映画監督を批判したそうだ。
そのいただけない傾向は、なにも映画界だけではない。
スポーツ界にも、USA色が広がりつつある。
プレミアリーグのオフィシャルボールは、イギリスが誇る「Miter」が務めていた。
しかし、00−01シーズン、その座をあの「Nike」に譲ってしまう。
「バスケットボール(つまりは、手で扱うボール)で、フットボールができるか!」
と、ニックが吠えた。しかし、その叫びも虚しく。
追い討ちをかけるように、マンUがNYヤンキースと手を結ぶ。
ユニホームも、「UMBRO」から「Nike」に変わるらしい。
たとえ、世界を敵にまわしても、ニックとアランは戦う。
男は黙って「Admiral」! 合い言葉は、これで決まり!
一見「ミツカン酢」のマークと見間違えてしまう程の、独特のデザイン。
すっかりお馴染みの「アンブロ」と違い、日本人にはちょっとマイナーな「アドミラル」。
しかし、イングランド国内に於いては、まだまだ人気のブランドだ。
特にヨークシャーでは・・・。我らがバーンズリーFCのユニフォームは、もちろん「アドミラル」製。
長いシーズンを共に戦う、男のブランド。もしも、「アドミラル」がスーツを作ったら、ぜひ「高倉健」に着て欲しい。
それぐらい、渋さとプライドを兼ね備えたイメージ。
「アドミラル」のジャージに身を包み、ガーデニングで汗をかき、渇いたノドを「ジョンスミス」で潤す。
それでこそ、真のヨークシャー男。まさに、理想的な休日の過ごし方。
その日ニックとアランは、渋谷・新宿のスポーツ店を、片っ端から巡り歩いていた。
フットサル用に、ウェアを新しく購入しようと2人してお買い物。
せっかく買うなら好きなモノを、と思うのは誰だって同じ。
しかし、久々に訪れた日本のスポーツ店を見て、愕然とした2人であった。
行く店、行く店、「アドミラル」なんてちっともない!あったとしても、店の片隅にほんの少しだけ。
有名ブランドに占領され、アメリカン・カルチャーに犯された店内のディスプレイ。
結局彼らは、そんな店々を一軒づつ手直しして回るハメになってしまった。
「すいません、アドミラルの商品はありますか?」とアランがたずねる。
「いやー、ウチでは扱ってないもんでねー」と、従業員が答える。
どこへ行っても、同じ会話の繰り返し。業を煮やしたニックが吠えた。
「ここは、経済大国ニッポンでしょ?しかも東京でしょ?なんで無いの?」
ここがヘンだよ日本人さながら、熱いトークをかますニック。
タジタジの従業員を残して、2人は店を後にした。
やっと見つけた「アドミラル」も、残念ながら子供サイズだったりして、
結局アランは「アンブロ」のシャツを仕方なく購入した。
しかし、ニックは違った。妥協を許さないこの男は、結局何も買わずじまい。
買い物用にと財布に用意した現金を、あろうことか全く違うモノに注ぎ込んでしまったのだ。
最近ニックは、よく友人達を自宅に招待するようになった。
以前はあまり自宅への訪問を、好ましく思っていなかった彼なのに。
それには理由がある。あるモノを見せたがっているのだ。
そのあるモノを確かめるべく、アランがニックの自宅を訪れた。
玄関を開けるなり、思わず手にした缶ビールの袋を落としそうになったらしい。
なんとそこには、ブラックライトに照らし出された、「マーズアタック」のジオラマがあったのだ。
その横で、ニコニコと子供のように、ライトをつけたり消したりするニックの姿。
段ボールと発砲スチロールを駆使して作った、ニックの小宇宙。
それはまぎれもなく、ニックの嫌いな「アメリカンカルチャー」のキャラクターそのものであった。
言葉を無くすアラン。やっとの思いで、出てきたセリフは、「スゴイねぇー・・・」が精一杯であった。
ケン・ローチが言ってたでしょ!ニック坊や。
そんなわけで、今シーズンの全日程も終了し、バーンズリーFCは16位。
あのSウェンズデーは、1ポイント差で17位。
「ガハハハハーッ。勝ったぞ!」と雄叫びを上げるニックとアランでありました。
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