第17話
「ハチマキ紳士」
腕の良いペンキ職人として、その名を町中に轟かせたパパ。
彼はその腕一本で、アランを立派に育てた。
月に一回は、オーダーメイドのスーツを仕立てる伊達男。
バーンズリー、いやヨークシャーきってのお洒落な男は、間違いなく紳士である。
そんなパパが、遠い異国で暮らす息子を訪ね、ついに東京へやって来た。
スーツにハット、そしてステッキ片手に到着ゲートに現れたパパ。
衝撃の初来日である。その威風堂々とした貫禄は、テリー・ベナブルズも真っ青。
「ハロー・サン!」
長旅の疲れも見せず、力強く息子アランを抱き締める。
さすがは筋金入りのバーンズリー、言葉少なに再会を祝った。
「ねぇパパ。疲れたろうから、まずは家まで行こうよ。」
「待てアラン。空港にパブはないのか?まずはギネスが飲みたい。」
仕方なく、アランは車を走らせ青山へと向かった。
渋滞を抜け、やっとのことでTa−Barへ着く。
店内に飾ってあるバーンズリーの切り抜きを見るなり、ニヤリと微笑むパパ。
「いい店だ・・・。ア・パイント・オブ・ギネス・プリーズ。」
しゃがれた深い声でオーダーが入る。
店中の客が固唾を飲んで、パパの一挙手一投足を見守った。
グラスを傾けノドを湿らす。
「フーッ」、まるで生き返ったかのような深いタメ息。
「ヴァーップ」、そしてゲップ。
本場ヨークシャー男の豪快さを目の当たりにして、誰もがタジタジだ。
そしてカバンの中から、ゴソゴソと何やら取り出したパパ。
「いつもアランから、みなさんの話しは聞いております。今日はプレゼントを持ってきましたので・・・」
と言って、スーパーの袋に入った中身を、カウンターにぶちまけた。
その銀色に光る物体。赤いシャツを着た、ヒゲ面のブルドック?
そう、紛れもないバーンズリーFCのマスコット、ヨークシャーのポケモンこと『トビータイク』のピンバッチ。
日本中どこを探しても決して売ってない、本場メガストアー直送のパパのお土産。
季節はずれのサンタクロースの登場で、店中が盛り上がった瞬間である。
滞在中、観光で浅草を訪れたパパ。ジャパニーズ・テイストたっぷりの仲見世で、ハチマキを手にした。
「これは必勝!といって、絶対に勝つぞ!という意味なんだよ」とアランが説明する。
「この漢字と赤色が気に入った」とラブリー!を連発するパパ。お土産用にと、早速それを購入した。
その後、約10日間の日本滞在中、パパは毎日のようにTa−Barへと足を運んだ。
ホロ酔いで、バーンズリーFCの応援歌(チャント)を歌う日もあった。
たくさんの思い出と共にイギリスへ帰ってしまったパパ。
アランのパパは、今やみんなのパパでもあったのだ。
1ヶ月程して、アランの元へ手紙が届く。差出人はパパ。
同封された写真には、オークウェルの前で、必勝ハチマキを巻いたパパが写っていた。
プレミア昇格の日を目指して、がんばれバーンズリーFC!
そして、いつまでもお元気でねパパ。東京の息子達より。
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